子供を褒めて伸ばすのと、それ以外の方法、どちらが効果があるのでしょうか?
先に結論を書いておきますと、
子供は褒めて伸ばすよりも、期待して伸ばす
方が効果的であることが、心理学の実験で分かっています。
今回は、心理学的に正しい期待の仕方を書いていきたいと思います。
目次
褒めて伸ばすはダメ?
褒めて伸ばす、という言葉が昔から言われていますが、これは効果があるのでしょうか?
『嫌われる勇気』でおなじみのアドラー心理学では、褒めて伸ばすことを否定しています。例えば、
「よくやった! すごいよ!」
という言葉を子供に言ったとします。すると、子供はまた褒められようと、努力をします。
確かに、この褒めて伸ばすという教育方法は有効です。一般的に言われる、正しい教育法であるともいえます。
しかし、アドラー心理学によると、
褒めるという行為は、能力ある人が能力のない人に下す評価
であるとされています。アドラーは対人関係を、縦の関係でとらえてはいけないと言っています。
子供の教育には、縦の関係でなく、横の関係を築くべきであるということです。
褒められると自律心が失われる
上下の教育で、子供の自律心の喪失が起こります。
一度褒められると子供は、もう一度褒められたいと願い、努力します。そして次も褒められ努力する・・・。
一見、効果が出ていて、すばらしいことのように思えるのですが、裏を返すと、褒められることへの依存が起きているといえます。
ようするに、褒めるという行為は軍隊の上官が部下に対して、飴と鞭の指導をしているのと大差ないわけです。
自分に能力がないことを認め、他者への隷属意識が芽生えてしまっている証拠です。
正しい褒め方
褒めるという行為がすべてダメかというと、そういうわけではありません。
アドラー心理学的に考えると、正しい褒め方とは、
勇気づけ
です。難しい課題の前に、人が立ち止まってしまうのは、その課題に立ち向かう勇気がないからです。
勇気を持つためにどうすればいいか、アドラーはこう言っています。
「人は、自分に価値があると思えたときにだけ、勇気を持てる」
この場合の価値とは、成績向上であるとかそういった実利的価値ではありません。ただ、そこにいるだけでいい、といった無条件の価値です。
アドラー心理学では、無条件に相手を信頼できたときに、幸福感を得られると言っています。他者貢献の精神こそが、すべてなわけです。
正しい褒め方とは、褒めるのではなく、その人の行いをすべて受け入れることです。
期待という暗示もある
しかし、アドラー心理学の考え方は非常に難しく、口で言うのは簡単なのですが実践するのは非常に困難です。
実践を始めてから、本当に身につけられるのに、自分の年齢の半分の年月がかかるともいわれています。
ここでは、褒めるとは別の角度から、期待という暗示をご紹介します。
アメリカの心理学者ローゼンタールは、期待に関してある実験をしました。
ある学校の学級名簿から無作為に数人の生徒の名前を挙げて、担任の先生に「彼らは数ヶ月の間に成績が伸びる」と伝えます。
すると数ヶ月後、名前の挙がった生徒の成績が実際に上がりました。
ローゼンタールは、この効果は生徒が期待を意識したから起こったと結論づけました。この効果を、
ピグマリオン効果
といいます。ようするに、先生が期待することによって生徒に暗示がかかったわけです。
期待の効果範囲
ただし、この効果の効能の範囲は限られてくるようです。先生と生徒の付き合いの程度によって、効果の大小があることが分かりました。
実験では、生徒と先生が出会って2週間以内の場合が、もっとも効果を得られる生徒が多かったそうです。
ピグマリオン効果をもっとも上手く活用するには、新学期が一番効果的ということになります。
実験の結果を応用すると学校以外でも、例えば家庭教師に、
「○○大の先生に、1年以内に成績が伸びると言われた」
などという嘘の情報を与えても、効果があるということになります。その他にも、習い事や趣味でもこの効果は応用できるでしょう。
是非、お試しあれ。