バイアスという言葉を、聞いたことはあっても意外に意味は知らなかったりします。
バイアスとは、思い込みのことです。
例えばこんなことありませんか? 仕事や勉強でミスをした。ミス自体は簡単なミスなのに、なぜか、そのときは気づかない。
これもようするに、ミスは絶対にないというバイアス(思い込み)がかかって起きたミスです。
バイアスには様々な種類のものがあります。今回は、感情バイアスと呼ばれるバイアスの紹介です。
このバイアスは、私たちが普段生活しているなかで絶対に起こりえるバイアスです。
目次
バイアスについての実験
バイアスについて面白い実験があります。これはアメリカの心理学者、経営学者であるダニエル・カーネマンが行った実験です。被験者に、ある簡単な算数の問題を出しました。
皆さんも実際に解いてみてください。制限時間は15秒。こんな問題です。
バットとボールは1セットで1ドル10セント。バットはボールより1ドル高い。さてボールはいくらでしょう?
実験では、大多数の人が自信を持って10セントと答えたそうです。
しかし答えは違います。正解は5セントです。バットが1ドル5セントで、ボールが5セントとなります。
この問題はハーバード大やMIT、プリンストン大学の学生にも出したそうですが、50パーセント以上の生徒が10セントと答えたそうです。
バイアスは、学歴や知能に関係なくかかるということです。
知的ショートカット
カーネマンは、ここで起こった心理現象のことを知的ショートカットと名付けています。
この実験では、15秒というタイムリミットが設けられていました。これによって、問題を解くときに不安や焦りといったものが生まれます。
こうした場面で、人間は思考停止に陥り、考えをよりシンプルなものへ(ショートカット)と持っていきたくなるわけです。
10セントと答えたのは、単純に1ドル10セントから1ドルを引いて導き出された答えだと思います。
実は僕も、この問題にひっかかりました。答えを聞いても、数秒間考えてしまったぐらいです。そのぐらい、強く10セントだと思い込んでしまっていたわけです。
余談ですが、カーネマンは2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。名前ぐらいは聞いたことある、という人も多いのではないでしょうか。
感情バイアスに振り回される
言うまでもなく、我々人間は日々様々な感情に振り回されています。喜怒哀楽、様々な感情の変化が日々の選択に影響を与えています。
感情バイアスとは、不快な情報を認めず肯定的な情報ばかりを信用するバイアスです。
上記の実験の通り、バイアスというものは非常に強力です。
例えば、待ち合わせに遅刻してきたとして、待たせた相手の不機嫌な気分のときと上機嫌な気分のときでは態度がまるで違いますよね?
これは感情バイアスの一種で、気分一致効果とも呼ばれているものです。
遅刻を「しょうがないよね」と許してくれるか、「約束も守れないのか!」と怒るのかはその人の気分によって違ってくるわけです。遅刻をした事実は同じなのに、です。
今後の関係性を考えたら、穏便に済ませたいところです。
バイアスを避けるための方法
ペンシルベニア大学とデューク大学の共同研究で、バイアスを回避するためのガイドラインというものが発表されています。
1,自分の認知、判断が感情に左右されることを自覚する
2,ストレスの大きいときに重大な決断をしない
バイアスは非常に強力なので、なかなか回避するのは難しいのですが、この2つを意識に置いておくだけで回避しやすくなるようです。
1に関しては、カーネマンの実験で理解できたと思います。2に関しては、人間追い込まれると前後不覚になることもあると思うので、注意が必要です。
いずれにせよ、この記事を最後まで読んで下さった方々は、今よりちょっとだけバイアスがかかりにくくなっているかもしれません(笑)