目次
綾辻以降、綾辻以前
『十角館の殺人』は、綾辻行人さんのデビュー作品です。
初めて読んだのは結構前なのですが、最近になって新装改訂版を購入したので、思い出す意味も込めて、レビューを書いてみたいと思います。
綾辻行人さんはこの作品でデビューして、それまでの本格ミステリに多大なる影響を与えました。それまで古典的な本格ミステリから、新本格ムーブメントを起こし、のちに「綾辻以降」とまで呼ばれるまでになります。
綾辻さんといえば、ミステリに馴染みのない人には『Another』の作者というぐらいのイメージしかないかもしれません。『Another』も面白い小説ですが、綾辻作品の真骨頂は館シリーズにあると思います。
クローズドサークル
嵐の山荘に閉じ込められたり、吊り橋が落ちて帰り道がなくなったりして、そんな外界との往来が遮断された状況で起きる事件をミステリでは、
クローズドサークル
といいます。
メジャーな作品でクローズドサークルものとして挙げられるのが、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』です。この作品は絶海の孤島で、殺人事件が次々と起きて、最終的には島に生きている人間が誰もいなくなるというもです。
詳しいレビューなどを後日書くかもしれないので、ここでは詳しい内容には触れません。映像化もされているので、観たことがある人は意外と多いかも知れません。
島に閉じ込められる
この作品は、『そして誰もいなくなった』のプロットを用いた作品です。
推理小説研究会の一行が角島と呼ばれる無人の孤島を訪れ、その島にある十角館という屋敷に一週間滞在します。
その一週間のうちに、次々と人が殺されていきます。そして、最後には島に生き残った人間は一人もいなくなります。
綾辻トリックの最高傑作
クリスティのある作品に同種のトリックを用いた作品(『そして誰もいなくなった』ではありません)があるのですが、この作品のインパクトはそのトリックの更に上を行きます。
もちろん、基本形を築いたクリスティへの敬意も忘れてはいけません。ただ『十角館の殺人』のトリックは本当にいい。綾辻さんの館シリーズはほとんど読んでいるのですが、この作品より衝撃を受けたトリックはありません。
初めて「例の一文」を読んだとき、全身からゾワゾワしたものが沸き立ち、鳥肌が立ったのを今でも覚えています。
人物描写は説明的
本格ミステリ全般に言えることなのですが、人物描写が一般的な大衆ミステリより説明的で、いわゆる共感というものは、ほぼ得られません。本格ミステリとはそういうジャンルの小説なので、それも仕方ないことです。
二階堂黎人さんは『ミステリーの書き方』で、このようなことを書いています。
「本格推理小説としての驚きの達成のために、それ以外の文学的な野心をすっかり捨てています。いいえ、全く興味がないのです」(ミステリーの書き方より引用)
ここまで割り切っている本格作家さんは、あまりいないでしょうが、全体的に本格ミステリはそういった傾向があるようです。
絶対にレビューをみてはいけない
この小説は絶対に、レビューをみてはいけません。
本ブログのレビューは、種に触れないように細心の注意を払って書いています。しかし、アマゾンレビューには種をほのめかしたり、場合によっては種を書いてしまっているレビューもあります。
この小説は、完全に初見でなければ驚きが大幅に激減してしまいます。
僕自身、この小説はまったくの無知識で手に取りました。きっかけは『空の境界』の作者奈須きのこさんが、この小説に影響を受けたと、なにかの記事で書かれていたのをみたことでした。
この本を読まないヤツは人生を損している
あまり、偉そうなことは言えませんが、個人的に今まで読んできた本格ミステリのなかで一番驚いた作品です。本気でそう言えるだけの魅力のある小説です。
未読の方は騙されたと思って読んで下さい。
読むのなら、新装改訂版がオススメです。