目次
あらすじ
夏の終わり、郊外の瀟洒な洋館「ロートレック荘」に青年たちと美貌の娘たちが集まる。
青年たちは優雅なバカンスを楽しむはずだったが、二発の銃声により悲劇が始まる。美女が一人殺され、警察が見張っている最中でもまた一人、また一人と殺されていく。
筒井康隆ミステリ
筒井康隆さんと言えば、印象に残っているのが『時をかける少女』です、2006年に映画が公開された『時をかける少女』は、筒井康隆さん原作の『時をかける少女』の20年後を舞台としたものです。
僕は映画版の『時をかける少女』しか観たことがないのですが、この作品は非常にいい作品です。
「いっけぇえええ!」
と叫ぶヒロイン真琴と、主題歌の奥華子さんが歌う『ガーネット』が印象に残っています。
筒井康隆さんと言えばSF小説。『ロートレック荘事件』は、元々SF作家だった筒井康隆さんが書いた3作目の推理小説だそうです。
説明の難しいミステリ
トリック自体は単純です。本格ミステリ(とりわけ新本格ミステリ)を読み慣れた人なら、すぐに想像がつきます。
実際、ミステリ初心者の僕でも、本文の最序盤を読んでいるときに、
「ああ、あのトリックだな」
とソッコーで気づきました。
ここである作家の名前を出すと、トリックをバラしているようなもののような気がするので敢えて避けておきます。
この手のミステリは、内容を書きすぎると、読む前にトリックの想像がついてしまうので加減が難しいです。
伏線が丁寧
本格ミステリ全般に言えるのですが、とりわけ、この作品は伏線の張り方がものスゴイ丁寧でした。
丁寧なのも当然で、カバーに、
「推理小説史上初のトリックが読者を迷宮へと誘う。前人未踏のメタ・ミステリー」
とある通り、ラストで伏線の張ってあった場所をご丁寧にすべて解説してくれるんですね。「○○ページ○行目」みたいな感じで、事件のあらましを語るときに、一つ一つに解説を付けてくれているわけです。
他にこういったミステリはあるのかもしれませんが、少なくとも僕はこういうミステリを読んだのは初めてでした。
いわば「最強にメタいミステリ」です。
ミステリ初心者にオススメ
僕もミステリ初心者なので偉そうなことは言えませんが、この本は普段ミステリを読まない人が読んだら、かなり楽しめるんじゃないかと思います。
連続殺人で全員にアリバイが成立していて、なのに外部の犯行の線が絶たれている。この状況で、どうやって犯人を見つけるのか。
非常に気になるところですね。
しかし、前述の通り少しミステリを囓っている人なら、すぐにトリックが分かる類いの作品です。
序盤で「あれ、これってアレじゃね」と思い、中盤で「絶対アレだろ」となって、終盤では「ほら! やっぱりだ」となるのは必至です。
そのため、万人にお勧めできるわけではないのですが、全くミステリを読まない人はまず騙されます。人生でトップ3の小説になる可能性すらあります。
是非、読んで確かめてみて下さい。薄い本なので頑張れば1日で読めます。