目次
名作ミステリ
この作品を知らずして、ミステリは語れない。
そう言い切っていいほど有名なミステリです。僕はこの本を文庫本で一回、オーディオブックで一回読みました。
オーディオブック版を聴いたのは、犯人は覚えていたのですが、最終的な結論をぽっかりと忘れてしまっていたためです。
初読は、10年近く前だったので無理もないです。犯人を知ってこの小説を読んでも、楽しめました。やはり、名作だなと再認識しました。
あらすじ
兵隊島に、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。2人の使用人が出迎えたが、招待状を差し出したオーエン夫妻は姿を現さない。
その晩、招待状は偽物であることがわかる。晩餐のなか、彼らの過去の犯罪を告発する声が蓄音機から流れる。それらの罪は、事件か事故か分からないようなものだった。
蓄音機からの音声が鳴り止むと、一人の青年が苦しみ出す。毒薬による殺人だった。翌朝には使用人の妻が死んでしまう。
残ったメンバーは、事件は童謡の「10人のインディアン」になぞらえて行われることに気づく。しかし、細心の注意を払っていたが、次々と人が殺されていく。
そして、最後は童謡の歌詞と同じで、
「そして誰もいなくなった」
警察が上陸するも、島からは生きた人間は一人も見つけられなかった。
U.N.オーエンは彼女なのか?
「U.N.オーエンは彼女なのか?」という楽曲をご存じでしょうか?
ニコニコ動画初期の頃に流行った楽曲で、ドナルドのMADなどで一世を風靡しました。この音楽は非常に耳に残り、とても10年前に作られたとは思えないくらい色あせないメロディです。
この「U.N.オーエンは彼女なのか?」は、『そして誰もいなくなった』のオーエン夫妻が元ネタになっています。
最終的に、ある女性が島で生きていた最後の人間になるのですが、そこから「U.N.オーエンは彼女なのか?」というタイトルを取ったとヰ言われています。
書籍のレビューで曲の紹介かよw と思われてるかもしれませんが、意外に知らない人もいるのでちょっとした豆知識にはなると思います。
十角館の殺人に影響を与える
この「孤島で人が死に最後には誰もいなくなる」というプロットは、以前紹介した綾辻行人さんの『十角館の殺人』に使われています。
(十角館の殺人の記事はコチラ)
この名作は、クリスティの『そして誰もいなくなった』があったから生まれたと言ってもいいかもしれません。
僕が人生で一番驚いた小説が、『十角館の殺人』なので、この古典がなかったら僕の一番が変わっていたかもしれないということを考えると、この作品の功績はかなり大きいです。
古典ミステリの重要性
正直言って、僕は本格ミステリ初心者です。クリスティの有名どころは、ある程度読んだのですがそれでも、まだ読んでいない作品が多数あります。なので、本格的なミステリ論は語れません。
新本格派の作家の森博嗣さんは、古典を読むといいと『読書の価値』のなかで書かれています。
森博嗣さんの言っていたことを掻い摘まんで説明しますと、
古典は読み継がれてきたわけで、名作が多い。数多くの本が出版されているなかで、名作に出会うには古典を読むのが一番確率が高い
ということでした。
ちなみに、数多くの新本格ミステリを書かれている、森博嗣さんですがミステリを幅広く読んでいるわけではないようです。森さんはエラリイ・クイーンを多く読まれているそうです。これも、
数ある日本人作家の小説よりも、厳選されて選ばれた作品が翻訳されている翻訳物の小説の方が、名著である可能性が高い
という理由で、クイーンを読み始めたそうです。森さんはバリバリの理数系なので、読書に関してもかなり理詰めで考えているんだな、と驚きました。
現代小説も重要
とはいえ、古典ばかり読んでいては現代に生きる作家さんたちが、食べていけなくなってしまいます。
古典を活かした現代の名作というのも、やはりあるので現代のミステリも読むべきでしょう。問題はバランスですね。
満足感のある読書をするには、古典を読むことも重要!
名作クローズドサークル
その点、『そして誰もいなくなった』は名作なのでハズレがありません。
基本的にはアリバイトリックが使われるのですが、その使い方に妙味があります。ドラマとかで見たことがある人もいるかもしれませんが、おそらくこの小説が初出です。
古典ミステリを一冊読みたい。
そんな方は、この本を手に取るといいと思います。