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主演俳優の素晴らしさ
『聖の青春』は何度か映像化され、舞台台本となって舞台上映されている作品です。今回僕が観たのは、松山ケンイチ主演の映画です。
この映画の上映当時は、松山ケンイチの役作りの凄まじさに驚いたものです。『3月のライオン』の映画版を観たあとに観たのですが、『3月のライオン』では村山聖をモデルとした二海堂晴信は特殊メイクによってデブになっていました。
しかし、『聖の青春』では松山ケンイチは実際に自身の体重を増やし、外見を村山聖に寄せていました。
ロバート・デニーロのよう
松山ケンイチの、役者としての登場部人物への没入度は、ロバート・デニーロを彷彿させます。
ロバート・デニーロは『ゴッド・ファーザー PARTⅡ』では役作りのためにシチリア島に住んで、シチリア訛りのイタリア語を研究し、マーロン・ブランドのしゃがれた声を完全に模写していました。
松山ケンイチが演じた役で一番好きなのは、『デスノート』のLなのですが、それ以外の作品を観ても、彼の役への入り込み方は尋常じゃないと感じます。
例えば、ドラマ『銭ゲバ』が挙げられます。金への執着心が桁ハズレの主人公を演じていたときは、本当に「金のためなら、なんでもするズラ」のキャッチコピーの通りに、執念を表情だけで表現していました。
個人的に山場と思ったシーン
基本的に物語に起伏はないのですが、それでも僕が気に入ったシーンはいくつかあります。一つ紹介しますと、対局のあとに居酒屋に羽生さんと飲みに行くシーンです。
居酒屋で、村山聖が2つの夢を語ります。村山聖は幼少時に「ネフローゼ症候群」という腎臓の難病にかかり、自分の寿命があまり長くないことを知っていました。そこで彼が語る夢が、
「名人になって引退すること」
「素敵な恋愛をして結婚すること」
語り口が独り言のようなのですが、刺さる台詞でした。言い忘れていましたが、東出昌大の演じる羽生善治も素晴らしかったです。特にこの居酒屋での場面は、勝負を賭けた棋士の想いが籠もっていました。
ラストで涙する
ノンフィクションなので、ネタバレもなにもないと思うので、ラストを書きます。ラストで村山聖は亡くなります。
病床で棋譜をそらんじながら、息を引き取ります。
このシーン単体というより、映画のなかで語られてきた村山聖の生涯の積み重ねで泣かされるという感じです。ちなみに、僕は泣くことはありませんでしたが、この辺りはドラマチックだなと思いながら観ていました。
原作ファンからすると、色々意見はあるのでしょうが、僕自身としては役者の入り込み度や、人生を淡々と描く感じは嫌いではありません。
松山ケンイチ、東出昌大両氏に敬意を表します。この映画は、役者がとにかく素晴らしかったです。ストーリーだけ追うような見方ではなく、きっちりと感情移入して観ることができる映画です。